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テレワーク導入にあたり就業規則を更改しよう!変更のポイントと考え方を一挙公開(中編)

テレワーク 浜松 ハマリモ! 就業規則
テレワークを導入する際は従業員の働き方や仕事環境が変わるため、就業規則にも変更が求められます。厚生労働省からテレワークモデル就業規則が発行されていますが、自社では具体的にどのように進めていけば良いかわからないとお悩みではないでしょうか?

この記事では3回にわたる連載で、ハマリモ!を運営するWe Will Accounting Associates株式会社(以下:We Will AA)を例に、テレワーク就業規則を作成したときの様子をお伝えしています。社労士の2名を交えたディスカッションの様子を通じて、テレワークを実施する上でポイントとなる労務設計や就業ルールなどをまとめました。従業員が5~100名規模の中小企業向けに役立つ情報となっています。

実際に、テレワーク導入のための就業規則更改は、より良い働き方や経営ビジョンを社内に落とし込むきっかけにもなります。テレワーク用の就業規則を作りたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

テレワーク導入の目的から適用対象者・業務の決定、テレワークの許可申請に関する手続きまでを考えた前編の様子はこちら

 

4.フレックスタイム制ではパートタイマーの労働時間も月の総労働時間で考える

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▲テレワーク導入にあたりWe Will AAで見直した就業規則上の項目


杉浦:ちなみにフレックスタイム制(※)の採用で、パートタイマーの労働時間はどのように変わりますか?

フレックスタイム制とは│
一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度。労働者は仕事と生活の調和を図りながら効率的に働くことができる。


嘉野内:フレックスタイム制では、パートタイマーも月単位で総労働時間を決めます。例えば、正社員は月に150時間働くメンバーで、それよりも短い労働時間の方はパートタイマーになるといった考え方になります。

水谷:気をつけなくてはならないのは、雇用保険や社会保険の加入要件となる労働時間のラインです。フレックスタイム制といえども、週20時間や30時間といった法定労働時間をオーバーすれば保険加入の対象となります。

杉浦:例えば、パートタイマーの所定労働時間を月80時間にしたとします。所定労働時間を超えて仕事をしていただく場合は、残業をお願いすることになりますよね。


タスクが少ない月は、予定していた総労働時間を下回る可能性があります。契約上で見込んでいたよりも、実働が少なくなった場合はどうなりますか?

嘉野内:総労働時間に足りなかった時間は、その分を翌月に働いていただくことで対処できます。ただ、雇用契約で定めた所定労働時間は、その時間を下回ることなく働いてもらわなければいけません。

杉浦:そうですよね。であれば契約した労働時間分は仕事を依頼しなければと思います。メンバーと会社、双方が納得できる仕組みを考えていきたいです。

逆に、従業員の貴重な時間をより多く仕事に割いてほしいと思ったら、雇用契約によって所定労働時間の枠を広げていかなければいけません。私は、雇用契約というのは、従業員の時間の枠を会社のために押さえてもらう行為だと思うんです。

水谷:テレワーク導入は御社にとって大きな転機だと思います。このタイミングで個々に面談するのが良いかもしれません。契約上変わることもあると思うので、一度従業員と話すのはどうでしょうか。

嘉野内:または、入社時は最低限の所定労働時間で雇用契約をし、段階的に更新していくのが良いと思いますね。本人の能力に応じて働く時間を伸ばしていくと合意できれば、コンプライアンスも遵守できます。

杉浦:そうですね。最初の3か月~半年間は、勤務時間を決めて出社してもらいます。はじめのうちは時間と場所を安定させないと、スキルアップも会社になじむのも難しいでしょうから。その期間を経てテレワークに移行していただきたいと思います。

 

5.フレックスタイム制における休日と残業の扱い方

杉浦:勤務可能時間として定めたフレックスタイム(5:00~22:00)外に働いた時間や1日の標準勤務時間を超えた分は、残業扱いになりますか?

水谷:いいえ、必ずしも残業になるわけではありません。フレックスタイム制では、1か月の総労働時間を上回った分が残業という考え方をしますので。

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出典:厚生労働省 フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き「フレックスタイム制とは」

杉浦:では、もし7:00〜20:00で(フレックスタイム・勤務可能時間を)設定した場合は、この時間外に働いた時間も労働時間として扱えば問題ありませんか?

水谷:はい、問題ありません。または、7:00以前に働く場合や20:00以降に働く場合は、申請制にするのも良いと思います。

杉浦:仮に、毎日夕方からしか働けない人が出てきたとして、働き方を人事評価に踏まえるといったことは就業規則上に書けるのでしょうか?

水谷:法的な側面から話しますと、フレックスタイム制は労働時間の拘束力に欠けます。時間を自由に使って勤務できることを推奨した働き方だからです。夕方や早朝に勤務時間が偏っているからといって、ペナルティはとくに設定されていません。

杉浦:土曜日の勤務も可能にしたいと思っていますが、フレックス制にするとそもそも休日の概念もなくなるでしょうか

嘉野内:週や月単位で合計する実働時間のみを管理していくので、曜日は関係なくなりますね。ただ、基本的に日曜日は休みにされたいですか?

杉浦:日曜日は法定休日なので、休みにしたいです。日曜日も出勤する人がいると、管理者は1日も休めなくなるはずなんです。どこかで全員が一斉に休む日を作らないと。

嘉野内:ちなみに休日労働が発生する場合は、事前にわかることが多いでしょうか?

杉浦:はい、事前にわかることが多いです。現在は土日祝日を休日とし、仕事をする必要ができた場合には休日出勤の申請を上げってもらっています。

水谷:勘違いしやすいのですが、土曜日は休日出勤になりません。休日は週に1日、必ず休日として設けなければいけない日のことです。休日出勤とは、その休日に勤務した場合をいいます。

杉浦:なるほど。弊社はサービス業や飲食業のお客さまもご支援しているので、場合によって土曜日に仕事をすることがあります。

ただ、フレックスタイム制では、「今週1日多く働いた分、翌週のどこかで1日休む」といったことが自己管理の範囲でできるようになるのですよね。自律的な働き方につながるので、とても良いと思います。

 

6.テレワークを許可する就業場所について

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▲代表的なテレワークの就労場所(イラスト出典:いらすとや

嘉野内:ここからは、就業する場所について教えてください。
 
杉浦:「自宅、その他会社が許可するところ」にしてください。例えば、弊社が運営するオープンイノベーション拠点のThe Garage for Startupsも含まれるようにしたいです。

「自宅では環境が整っていないため、自宅の近所のコーワーキングスペースを利用したい」といった場合にも、柔軟に対応できるようにしたいと思います。

嘉野内:出張が発生することはありますか?例えば、移動中の新幹線の中で仕事をする場合は、「モバイルワーク」にあたります。オフィスでもなく、会社が許可した場所でもないので、そうした定義になるんです。

杉浦:「モバイルワーク」の定義が難しいですね。We Will AAは事務代行をメインの業務としているので、「自宅、その他会社が許可するところ」で良い気がします。

嘉野内:わかりました。また、御社が開発に関わっていらっしゃる「オフィスカー」で働く場合もあるでしょうか?

杉浦:ありますね。それも「会社が許可するところ」に収めるのが良いかと思います。

嘉野内:それでは、「モバイルワーク」の記載はなしでいきましょうか。

杉浦:そうですね、お客さまの気持ちを考えても、勤務場所をあまり広げるのは心配です。ですので、就労場所は「自宅、その他会社が許可するところ」として、会社が許可する場所も原則としてコーワーキングスペースに限りたいです。出張の際は出張として労働時間を扱うので、あえて「モバイルワーク」を定義しなくて良いと思います。

 

7.セキュリティ環境、情報通信機器などの貸与について

嘉野内:続いて、仕事環境について考えましょう。自宅や会社が許可する場所でテレワークすることになるので、セキュリティや通信環境の条件を考える必要があります。

杉浦:「安全で十分な通信環境」「自身の健康管理」「個室のように1人きりになれる空間があるか」、この3つを準備できるかどうかが基準になると思っています。

嘉野内:机や椅子などは従業員に準備してもらう考えですか?

杉浦:はい、ご自宅の環境整備は従業員の自己責任の範囲だと考えています。「独立自尊」の理念上も、自律して働ける環境を自ら作ることは自己責任に含みます。椅子・机の性能や部屋の明るさ、室温なども、自分がもっとも健康に仕事ができる環境に整えてもらいたいと思います。

嘉野内:パソコンやプリンターなど情報通信機器の貸与についてはどうお考えですか?

杉浦:現段階では、パソコンと携帯電話が支給対象だと考えています。お客さまやメンバーとのコミュニケーションに使うものなので、業務上において会社が占有する必要があります。会社が占有したい機器は支給するという考え方かと思います。携帯電話については、全員というわけではなく、お客様とのやり取りが多く発生するメンバーに限ると思います。

水谷:ちなみにウイルス対策ソフトについてはどうお考えでしょうか?

杉浦:共通のセキュリティソフトを使用しています。

水谷:会社全体で共通しているので良いですね。ネットワークやウイルス対策ソフトなども本人に任せにしてしまうと、会社として責任を問われる場面もあると思いますので。

杉浦:そうですね。携帯電話を会社から支給するのも、テザリング機能を使ってネットワークに接続してもらうことを検討しているためです。

会社のパソコンをつなぐネットワークは、会社の管理が行き届く範囲に限るのが良いと思います。フリーWi-Fiも使用しないように、気をつけてもらわないといけません。

水谷:セキュリティが懸念される家庭用ルーターもありますからね。テレワークを許可する場合には、ご自宅の通信機器について品番を明記してもらう必要があるかもしれません。

杉浦:仕事環境や健康管理については、別紙に要件や基準を記しても良いかもしれませんね。要件は時代とともに変わっていくと思うので、全部を就業規則に書いてしまうと大変です。

水谷:そうですね、就業規則の規程とは別にマニュアルを作ると良いと思います。

 

8.セキュリティ対策とルール策定について

嘉野内:つぎは、具体的なセキュリティ対策の方法を伺います。まず、御社のIT環境について教えてください。会社貸与のパソコンや携帯電話を使って勤務するようになったとして、リモートデスクトップ(※)は使用されませんか?

リモートデスクトップとは│
ネットワークを介して離れた場所にあるパソコンにアクセスし遠隔操作できる機能、その機能を支える技術のこと。


杉浦:今のところ使う予定はありません。

嘉野内:となると、クラウド上のソフトやツールを使用して業務をされるのでしょうか?

杉浦:はい。基本的にGoogleのクラウドサービスを利用しています。スケジュール管理はGoogleカレンダー、共有フォルダーとデータの管理はGoogleドライブ、メールはGmail、ビデオ会議ツールにはGoogle Meetを活用するなどしています。

また、これらのサービスにアクセスできるのはWe Will AAドメインのメールアドレス保有者に限定することで、セキュリティを保っています。

嘉野内:では、御社で管理するのはGoogleにログインするためのIDとパスワードのみでしょうか?

杉浦:はい、ログインIDとパスワードのみです。ほかにも二段階認証を有効化しています。セキュティに関しては、アクセスコントロールをしっかり考えてきました。お客さまの大切な会計データや人事データにアクセスする事業ですので。

嘉野内:モニタリングについてはいかがでしょうか?会社はメールや社内SNSなどのやり取りの監視ができるという旨を記載する項目があります。

杉浦:今はモニタリングをしていませんが、Googleの基本機能を使えば、ある程度の監査ができます。アクセスしたサイトやGmailの内容なども、見ようと思えば見られるようになっているはずです。

とはいえ、一番のセキュリティ防止策は、どれだけ信頼関係を構築できるかだと思っています。We Will AAでは、疑いから入って監視するようなセキュリティ対策はしたくありません。

あくまで悪意があって起こすのではない万が一の事故をどう防いであげられるかという観点で、対策や仕組みを講じるようにしたいです。そうした背景から、独自のセキュリティシステムも構築しているところです。

嘉野内:SaaSを利用することで、アクセスコントロールやモニタリングの課題をクリアしていることがわかりました。情報資産の取り扱いについては、いかがでしょうか。書類の管理はどのようにしていますか?

杉浦:We Will AAでは、紙の取り扱い量が極端に少ないんですね。お客さまから資料を借りることはありますが、必ずお返しできるように管理しています。リスト上でどういった資料をどのタイミングで利用して、いつ返却するかといった情報を整理しているんです。なので、紛失などの事故を防げています。

社内資料についてもチェックリストをまれにプリントアウトするくらいで、ほとんど紙を扱っていません。

嘉野内:自宅にシュレッダーがない場合は、紙文書の取り扱い方を確認する必要があると思います。これについては、いかがでしょうか?

杉浦:オフィスに「機密書類処理ボックス」という溶解処理用の段ボールを設置しています。文書が不要になった紙文書は、その箱の中に入れて適切に処理しています。

嘉野内:かしこまりました。セキュリティに関して詰めるとすると、あとは細かい運用ルールの策定になりそうですね。別途、マニュアルを作成するのが良いかもしれません。現状を加味してルールを定めるイメージです。

例えば、パソコンの取り扱いやログインIDの管理方法などについてルールを明確にする必要があるかもしれません。ソフトウェアのインストールやアクセス制限といった、技術的な対策についても触れたいところです。物理的な面では、紙媒体の取り扱いをどうするかといったルールが必要です。

杉浦:そうですね。総務省が発行しているテレワークセキュリティガイドラインもあります。研究を重ねながら、マニュアルを作りこんでいきたいと思います。

現時点ではセキュリティに困るようなことはないので、一旦は現状を就業規則に落とし込んでください。

嘉野内:かしこまりました。ちなみに情報セキュリティに関する教育研修は、入社時や定期に実施していきますか?

杉浦:はい、半年に1回といったペースで研修を実施していきたいです。セキュリティに関する知識や対応は、いわば“テレワーク時代のドレスコード”のようなものですよね。社員1人ひとりへの意識付けが必要だと思います。コストをかけてもやるべきだと思いますし、時間経過にともないアップデートしていくものだと思います。

ただ、研修といいつつ、ヒアリングに近い形になるかもしれません。従業員に、現場で困ったことやセキュティ上の危険を感じたことなどがないかを確認していきたいです。


⇒続編は近日公開予定です。

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