LINEとタブレットで「誰も取り残さないDX」を、工場間のリモートワークを実現する大建産業

高い溶接技術を生かし、おもに鉄の製缶や機械加工を手がける大建産業株式会社(以下、大建産業)。機械設計メーカーなどから依頼を受け、高付加価値な機械を搭載するフレームを製作しています。

生産現場での作業が必要だったり、職人さながらの繊細な技術が求められたりと、製造業のリモートワークは難しいと思われがちです。しかしながら大建産業では、2020年12月から業務のデジタル化を進め、本社と工場間などでのリモートワークを実現してきました。

中小企業や町工場は、どのようにリモートワークを導入したらよいでしょうか?そのヒントを得るため、代表取締役の武田信秀さんと総務の担当者お二人から、同社の取り組みを伺いました。

【会社概要】

会社名   : 大建産業株式会社

設立    : 1973年

代表者   : 代表取締役:武田 信秀

所在地   : 静岡県浜松市南区恩地町650

主な事業内容: 製缶・機械加工・レーザー設備

総従業員数 : 43人

会社URL  : http://www.tokai.or.jp/daiken

目次

社内データのクラウド化とタブレットの導入で、生産現場のムダを大幅改善

大建産業の2代目である代表取締役の武田信秀さん。2016年には光産業創成大学院大学にて博士号を取得

大建産業では、パソコンやタブレットから社内データへのアクセスや情報共有を行えるよう、クラウドツールによる社内ITシステムを構築しています。これにより、本社事務所と本社工場、第2工場、そして現場事務所間のリモートワークを実施できるようになりました。 

きっかけは、2020年夏ごろ。武田代表が社内にデジタル化を呼びかけ、次の2ステップで環境整備を進めたことでした。

STEP1:社内外の協業を円滑に進めるグループウェアを導入し、その中に受発注データや図面などを保存。役職者はクラウド上でいつでも・どこでも社内データを確認できるように。

STEP2:全社員にタブレットを配布し、業務に必要なアプリをインストール。持ち場を離れることなく社内データを共有できるようにし、社員間の連絡も円滑に。

これらの取り組みによって、工場間でのリモートワークが可能となったのです。

そのほか、以下3つの観点でデジタル環境を整えていきました。

  • ネットワークの拡張:これまで事務所内に限っていたWi-Fiを工場内でも使えるよう拡張
  • セキュリティの強化:情報漏洩対策として本格的なセキュリティ機器の設置
  • コミュニケーションツールの導入:LINEの企業向けプラン「LINE WORKS(ラインワークス)」を採用

これらのデジタル化を進めて1年ほどが経ちます。これまでに得られた効果について、総務のお二人は次のように語ります。

「今まではクライアントから預かった図面を事務所で紙に出力し、生産現場に運んでいました。それらの図面をクラウドに保存した今は、担当者自身が現場でタブレットから確認できます

「拠点間のやり取りをリモートで行えるようにしたことで、人の移動がほぼゼロになりました。時間の大幅な削減に貢献しています」

本社と工場間、また工場同士のリモートワークを可能にした大建産業ですが、実は社員の年齢層が幅広く、20代の若手から60代、70代の職人まで在籍しているといいます。

グループウェアやデジタル機器は、抵抗なく受け入れてもらえたのでしょうか?

「慣れるまで多少は時間がかかりましたが、無理なく使ってもらえた印象です。『みんなが分からないものは導入したくない』と考えていたのが、良かったのかもしれません。

タブレットを選んだのは、スマートフォンと操作が似ているからです。スマートフォンなら扱い慣れている人が多いことに気付いてそうしました。

LINE WORKSを採用したのも、多くの社員がLINEを使い慣れていることによる判断でした。文字(メッセージ)や写真でやり取りできるので、ホウ・レン・ソウが楽なんですよね」

「とはいえ、タブレットを初めて使う人もいました。操作に早く慣れてもらえるように、就業時間外であればYouTubeやその他アプリを自由に使ってよいことにしました。

自宅への持ち帰りも許可していて、夜勤の方の中には、昼の役員会議を自宅から視聴する人もいます」

3カ所の拠点間の移動を削減するほか、タブレットの活用による効果はこんなにも。

  • 現場トラブルへの迅速対応が可能に:上司へ報告するために、これまではトラブルの都度作業を止めていた。タブレットが導入されてからはビデオ通話を使い、画面上で状況を説明。すぐに指示を仰げるようになった。
  • 目的やメンバー別にトークルームを作成:ログが残ることで、「言った、言わない」がなくなった。“未読”の人がわかるので、LINEを見るクセが付いた。取引先ともグループトークを作成し、受発注のやり取り。注文時、発注書と共に画像を添付することで、受発注の間違いがなくなった。 
  • 役員会議をフルオープンに:週1回行われる役員会議をオンラインに変え、タブレットから誰でも視聴できるようにした。現場で作業しながらでも会議の様子が分かり、必要があれば意見を述べることもできる。

タブレットとLINEの活用で、「人の移動」と「作業の中断」をなくし、「スムーズなコミュニケーション」を可能にした大建産業。課題と現状を見極め、自社に合ったリモートワークやデジタル化を進める重要性がわかります。

小さく始めて、大きく育てる。頼れる社員と外部パートナーの存在が「誰も取り残さないDX」の推進力に

広い工場内のどこでもWi-Fiを使用できる。データを確認したり、作業机に置いたタブレットから会議に参加したりできる

リモートワークやデジタル化の取り組みも、最初から上手くいったわけではない、と担当者のお二人は言います。

「DXを進めるよう社長命令があり、まずはシステムのクラウド化を始めるよう言われました。ですが誰に何を相談すれば、当社にあったクラウド化ができるかわかりません。ネットで調べても、オンラインセミナーに参加しても、専門用語ばかりでちんぷんかんぷんでした。

そんなある日、コピー機をリースしている会社に相談を持ちかけてみると、思いもかけずクラウドサービスの提案をもらえたのです。

いつでも、どこでも役職者と事務所のパソコンから社内データを見たいというオーダーに対し、見積もりを2パターン出していただきました。まずは必要最低限のプランから始め、必要に応じて追加していくことにしたのです」

そのほか、タブレットの購入やWi-Fiの敷設工事など、デジタル化に必要なことをすべて依頼しても150万円ほどの見積もり金額だったそうです。

大建産業の業務内容を理解していて、何でも相談できることも安心材料に。コピー機のリース会社をパートナーとして、デジタル化の支援を依頼することになりました。

とはいえ、決して小さくない投資金額です。費用をかけてもデジタル化を進めた背景を武田代表が教えてくださいました。

「製造業はどこもそうだと思いますが、職人は無口な人が多くって。現場でのコミュニケーションを活発にしたかったんですよ。かといって、会話のために手を止めると、仕事をサボっているように見えてしまい困る、という声も聞いていました。

現場の作業を止めることなく気軽に会話できるようにしたいと思ったら、デジタルツールの導入が必要でした」

ゆくゆくはデジタル化により生産工程を把握できるようにし、「職人のがんばりを見えやすくしたい」とも考えているそう。ただ、デジタル化の真の目的は、さらにその先にありました。

間違えてはいけないのは、デジタル化は生産効率を上げるためにやるのだ、ということです。当社でも以前は、月末になると納品書や請求書の数字を一生懸命パソコンに転記する経理の姿が見られました。今では1日15分の作業で、売り上げと支払いのデータが瞬時に出てきます。

そうしたデジタル化を生産現場でも進めたい。そのための第一歩がタブレットの導入です。製造の効率化は、競争力のひとつになり得ますから」

さらにDX担当者が、パソコンやスマホを使い慣れたデジタルネイティブ世代であったことも、デジタル化の推進に寄与したと武田代表は言います。

「タブレットの使い方でわからないことがあると、みんなすぐ彼女に聞きにいくんです」と、先輩社員の担当者さん。デジタル化のおかげで社内のコミュニケーションが活発になった様子がうかがえました。

リモートワークもデジタル化も会社と社員が成長を続けるための契機

2011年には溶接ロボットシステムを導入、近年ではレーザー加工を取り入れるなど、既存技術と融合したものづくりにもチャレンジしている。社長室の壁にはさまざまな認定証や修了証が

最後に、リモートワークやデジタル化について今後の展望をお聞きしました。

「在宅ワークを行うまでは難しいので、リモートワークをどうしていくかは今後の課題です。しかし、リモートワークを可能にするためのデジタル化には、今後も変わらず取り組んでいきます。LINEとタブレットは、コミュニケーションツールとして今後も有効活用していきたいですね。

弊社の社是は『和』、経営理念は『社員一人ひとりが仕事を通じて、成長できる会社であり続ける』です。まずは全員がベクトルを合わせ、デジタル化にも対応しながら、会社と社員のどちらも時代に取り残されることなく成長し続けていきたいと思います」

と、総務の担当者さん。

新たな技術開発や製品開発による差別化はそう簡単なことではありません。そんなときリモートワークを活用した業務改善ならば、今すぐ始められることも多くあります。

リモートワークやデジタル化の一歩も、小さく始めれば定着しやすく、改良へのモチベーションにもなります。そのためにも、経営や現場の課題を見極め、自社に合った形を取り入れることが大切だということを、大建産業の例が教えてくれました。

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