バックオフィス部門を中心にテレワークを社内浸透させた3ステップと意思決定上の効果

株式会社ソミック石川
本社所在地:静岡県浜松市南区古川町500
従業員数:1,796人(2021年4月現在)
事業内容:自動車部品(ボールジョイント)の開発・設計・製造・販売
会社ホームページ:https://www.somic.co.jp/

株式会社ソミックマネージメントホールディングスとそのグループ会社でボールジョイントを主力とする自動車部品メーカーの株式会社ソミック石川(以下、ソミック)では、国内グループ内約2,000名のテレワークと向き合っています。

ロードマップを作成し、バックオフィスと製造の2部門それぞれにできることから実施してきました。同社の代表取締役社長 石川 雅洋さん(以下、雅洋さん)と取締役 石川 彰吾さん(以下、彰吾さん)に、同社の取り組みついてお話をうかがいます。

目次

バックオフィスはフルリモート体制、製造部門の現場もオンラインでのやり取りが可能に

車内で働ける「オフィスカー」よりテレワーク

彰吾さん:まずテレワーク実施の現状をお話すると、バックオフィス部門ではほぼフルリモートでの勤務が可能な状況です。製造部門についてはネットワーク基盤を整備し、工場と本社・事務所間のやり取りを遠隔で行えるようになりました。

製造業務を完全にテレワークへ切り替えようとすれば、多大な時間とお金が必要です。ですが、自動車業界で進むデジタル化に追随するために、製造現場でもテレワークが可能な環境整備(オンラインやデジタルを通じて業務ができる状態)を進めていこうと検討しています。

フロア全体の、出勤・リモート・有休など、日々の出勤状況をマップで見える化している

今でこそ本格的なテレワーク実施に動いているソミックですが、ビフォーコロナではこんな状態にありませんでした。テレワークという言葉を何となく意識しては、「やれる?やれない?」という議論ばかりを繰り返していた1社にすぎなかったのです。

雅洋さん:お客さまであるカーメーカーさまでもデジタル化が進む中、ソミックでもシステムのクラウド化やICT投資を進めようという話がありましたね。テレワークの導入を進める動機はあったということです。ただ、その引き金になったのは、新型コロナウイルスの感染拡大でした。

彰吾さん:もしも工場で集団感染が起きてしまったら、最悪の場合は工場の稼働を止めなければいけません。製品の納入がかなわなくなりますし、社員とそのご家族、ひいては地域にご迷惑が及んでしまいます。ソミックの社会的責任は大きく、集団感染は絶対に避けなければならない状況だったのです。

雅洋さん:そこからテレワークの導入を決め、「変わろう」とメッセージを社内に発信しました。そして彰吾さんをはじめ取締役会のメンバーに集まってもらい、具体的な進め方を考え実行してもらいました。

彰吾さん:まずはテレワークできる環境作りからだと話をしましたね。そのうえで具体的に進めた施策は次の3つです。

  1. ロードマップの策定
  2. 情報系システムの整備
  3. 有志の勉強会を開催し、部門レベルでテレワークを実装

1.ロードマップの策定

彰吾さん:テレワークを実装するにあたり、「何をどれくらいのレベル感で進めれば良いか」を企画するよう社長から指示をいただきました。はじめに最低限必要な環境は何か、それができたら次はどのような環境に移行すれば良いのか。ITを統括する取締役とともに議論し、ロードマップを作りました。

2.情報系システムの整備

彰吾さん:テレワークできる環境作りについては、情報系システムを整備することから始めました。主に、マイクロソフト社の提供する協業アプリ「Microsoft Teams(チームズ、以下:Teams)」を本格的に活用しました。Teamsは、チャットやビデオ通話、ファイル共有など、協業に必要な機能を備えたツールです。

画像引用:Microsoft Teams公式サイト

コロナ以前から、マイクロソフト社の提供するoffice365製品ラインをまとめて利用できるMicrosoft365(旧Office365)を導入しており、その中にTeamsも含まれていました。改めてTeamsを本格稼働することで、コミュニケーションとワークスペースの基礎を整えました。

雅洋さん:あわせて、ネットワーク環境の見直しを行いました。工場も含めた全社の通信を横断的に行えるようにするためです。この設備改修により、工場との連絡・会議はすべてオンラインで行えるようにしました。

彰吾さん:テレワークの導入は段階的に、バックオフィス部門から進めていきました。生産現場がテレワークを行えるようにするには、IoTの活用やDXといった大がかりな変革が必要だからです。製造部門の社員割合は全体の6割を超えることもあり、バックオフィス領域の環境整備を優先しました。

3.有志の勉強会を開催し、部門レベルでテレワークを実装

マイクロソフト社の協力を得ながらTeamsの使い方に関する勉強会を実施


彰吾さん:情報系システムを整備したあとは、部門長レベルで現場へテレワークを実装してもらう段階に移行しました。マイクロソフト社の支援をいただきながら、まず、Teamsの機能や使い方を知ってもらう勉強会を開催したのです。

勉強会といっても、全社で一斉に研修をしたのではありません。最初は、有志の方を募って参加してもらいました。テレワークを実施する意味と本質をともに考え、理解してもらえる人たちから普及したかったからです。

有志の勉強会が終わったあとは、勉強会に参加したみなさんの上司にあたる部門長向けの勉強会を開きました。テレワークの実施にあたり、具体的に何をすれば良いのかわらかず悩んでいる方が多いのではないか、と考えたためです。

部門長向け勉強会の様子

彰吾さん: 勉強会を通じて部門長のみなさんと有志のメンバーをつなぎ、有志組が自ら手を挙げ勉強してきた経緯を知っていただきました。部門長が意見を聞きたいことがあったときに答えを返せる人を作るためです。Teamsを使ったテレワーク推進を図るためのアイデアでした。困ったことがあれば相談しあえるように、履修者同士のネットワークも作りました。

会議の効率性向上や柔軟な発想で意思決定に違い

代表取締役社長の石川雅洋さん

雅洋さん:私自身が感じているのは、間違いなく会議が効率化されたということです。今では、すべての社内会議をオンラインで行っています。会議資料があらかじめ配られ、参加者は事前に読み込みます。話す内容や方向性がある程度固まった状態で会議に臨むので、意思決定も早くなりましたね。

彰吾さん:私は、つい先日まで丸々2週間、自宅でテレワークを実施しました。いざ自分でテレワークを実施してみると、さまざまな効果が得られました。

例えば、車通勤に費やしていた時間が浮き、家族との時間や自分の時間が増えたことです。私の通勤時間は1日1時間です。2週間で計10時間が削減できました。1カ月間テレワークをすれば、丸1日分の時間が作れる計算です。移動時間を削るだけで、たくさんのことができる気がしました。

在宅時のテレワークの様子

テレワークを行うことで発想が広がり、ビジネスの新たな可能性や業務効率化のアイデアも湧きました。一昔前には、パフォーマンスを上げるためには働く時間を増やすという時代もあったと思います。テレワークが必須になると、時間内で生産性を高めるための工夫が生まれます。

テレワークからDXまで、人々とのつながりを大切に“未来の正解”へ挑んでいきたい

取締役の石川彰吾さん

雅洋さん:生産現場におけるテレワークに考えを巡らせたとき、事業全体の生産性を高めるDXの視点は外せないと思います。私の考えるDXとは、社内のあらゆる数字を集め、世の中に役立つモノ作りに活かすことです。今後は基幹系システムも見直し、各現場にとって必要なデータをタイムリーに抽出して届ける仕組みを完成することが理想です。

自動車業界もテレワークやDXに大きく舵を切っています。だからこそ、これからは人との繋がりをいかに作るかを真剣に考えなければいけない時代だと思います。社員とそのご家族、協力会社さまに地域のみなさま、そして、これからご縁のあるみなさまと、より良いつながりを育んでいけたらと考えています。

彰吾さん:今はロードマップ上の「環境作り」が終わり、「定着」のフェーズに入ったと思っています。社長のおっしゃるとおり、将来的には、テレワークへの取り組みを生産現場の効率化につなげることが目標となるでしょう。

テレワークに関するさまざまな取り組みをしてきたソミックですが、私たちの役割はベストプラクティスを出す事ではないように思います。むしろ、可能性のあることにとにかくチャレンジし、本当に役立つのかどうかを地域のみなさんとディスカッションしていくことでしょう。

ベストプラクティスは、大企業や行政の方々が見出してくださるものかもしれません。そのベストプラクティスにつなげるためにも、私たちはトライアルや提案をたくさんしていきたいと思います。そうして浜松がより良い街になる一助になれたら嬉しいです。

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