【セミナーレポート】浜松のデジタル化を加速する!DXを支えるマインド・働き方を考える1Dayセミナー

起業・新規事業を目的とした交流の拠点である「The Garage for Startups(以下、The Garage)」で5月27日、浜松のデジタルシフトを加速する!DXを支えるマインド・働き方を考える1Dayセミナーが開催されました。

DXの第一歩を踏み出すきっかけ創出を目的とした本イベント。ハマリモ!にて主催するとともに、同アドバイザーの沢渡あまね氏および倉重・近衞・森田法律事務所代表の倉重公太朗氏に登壇いただきました。イベント当日の様子をお伝えします。

なお、当日の様子は以下のYouTubeでもご視聴いただけます。
セミナーの全編を視聴したい方は、ぜひご覧ください(動画時間:2時間4分)。

撮影協力:株式会社filments
目次

バリューサイクル・マネジメント著者が語る!デジタルスマートシティ浜松の期待と課題

ハマリモ!アドバイザーの沢渡あまね氏

週5日・1日8時間(以上)働き、サービス残業や休日出勤もいとわず……。かつては日本の経済成長期を支えたこのような働き方について、「時代にそぐわない負けパターンになりつつある」と警鐘を鳴らすのは、ワークスタイルおよび組織開発専門家の沢渡あまね氏です。

不確実性の高い現代を生き抜くため、ここ浜松市内の企業にも新しい働き方やビジネスモデルの再構築が求められています。これからの働き方と浜松市のポテンシャルについてレクチャーいただきました。

沢渡 あまね|

作家/ワークスタイル&組織開発専門家。
あまねキャリア工房 代表(フリーランス)/株式会社なないろのはな 浜松ワークスタイルLab所長/株式会社NOKIOOアドバイザーほか。日産自動車、NTTデータなど(情報システム・広報・ネットワークソリューション事業部門などを経験)を経て現職。350以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。近著に『バリューサイクル・マネジメント~新しい時代へアップデートし続ける仕組みの作り方』がある。

「オープン型」への移行が鍵!マネジメント様式や働き方をアップデートしつづける地域・組織が選ばれる時代へ

旧来型のマネジメント様式(表の左)とこれからのマネジメント様式(表の右)

沢渡氏:多くの日本企業は過去50~60年、製造業に最適化された「統制型」のマネジメントを採用してきました。ものを作れば売れた大量生産かつ大量消費の時代には、合理的なマネジメント様式だったためです。

しかし、新型コロナウイルスのような未知の脅威や少子高齢化による労働人口減少をはじめ、今の時代は不確実性と複雑性が高まっています。そんな中、「統制型」一辺倒の企業運営や組織カルチャーは大きなリスクになりつつあるのです。

「統制型」一辺倒のマネジメントは、管理職も従業員も主体的に問題・課題を定義し、主体的に解決へ導くことには向いていないからです。新たな価値創造やイノベーションをうながすには、部分的にでも「オープン型」のマネジメント様式を取り入れていかなければなりません。

「オープン型」では、それぞれに専門の能力を持つ人がビジョンとゴールのもとに結束し、権限を委譲された形で業務を遂行します。このことは、組織や地域に関係なく他者や他社とコラボレーションし、課題解決に向かう働き方につながります。

新型コロナウイルスの蔓延にともない、なかば強制的にテレワークを導入せざるを得なかった都市部の企業は、(業務のデジタル化・オンラインコミュニケーションを通じて)事実上オープン型の働き方を経験しました。そこから、コミュニケーションのやり方もオープンに変えよう、ITに投資しよう、マネジメントのスキルアップを図ろうとさらなる進化を遂げている企業も増えています。

先進的な企業は、やがて気づき始めました。「このやり方なら、全員をオフィスに出社させなくても十分に事業が運営できる」と。こうして、遠方に居住する優秀な人材を「フルリモートワーク」で転居を求めずに採用する企業も増えてきています。「テレワークでなら働きたい」人たち、あるいは副業人材などが先進的な企業に流れはじめています。

「オープン型」のマネジメント様式に関しては、「経営課題解決のためのテレワーク導入・活用Webセミナーレポート」の中でくわしくお伝えしています。2020年11月に公益社団法人浜松地域イノベーション推進機構の主催で行われたセミナーの内容となります。テレワークを起点とする組織の変革にご興味のある方は、ぜひご一読ください。

「製造業のまち」浜松は「イノベーションのまち」に変われるか?

対談する沢渡氏の様子

浜松の現状はどうでしょうか?沢渡氏は、「浜松の課題は、製造業ベースの固定的な働き方と組織カルチャーにある」と言います。

沢渡氏:製造業が産業の中心なので、どの企業も始業時刻がだいたい同じ。車通勤が一般的で、朝は道路が渋滞します。この通勤時間は地域の大きな損失であり、リスクでもあります(交通事故を誘発しやすいなど)。

全員に同じ働き方と同じ行動を求めることにより、同調的な環境を生みやすいデメリットもあります。外部の意見や新たな提案を受け入れづらくなり、ドラスティックな問題解決やイノベーションが生まれにくくなってしまいます。

デジタルスマートシティと言われる浜松期待と課題

沢渡氏:一方で、浜松には大きなチャンスもあります。たとえば、80万人の人口基盤があること。それだけ、イノベーティブに変わり得る人材の母数も多いということです。東京や大阪、名古屋などとのアクセスも良いので、オープンに他都市の人材とつながる経験も得やすいでしょう。

ここThe Garageのようなオープンイノベーション拠点もありますし、行政も街をあげてのデジタル化を推進しています。このような環境を生かして適切に育成投資や働く環境のオープン化を進めていけば、新たな価値創造にシフトする組織と人材が増えていくはずです。

まずは、できる部署・部門など部分的にでも良いのです。自分の“半径5メートル”以内のデジタル化を進め、いち早く他者・他社とコラボレーションできる環境を整えましょう。デジタルを駆使した、オープンな働き方を体感し、「慣れた不便」から解放されていく。そこから、地域や企業の求心力も高まっていくのではないでしょうか。

“半径5メートル”から始めるオープン型への組織変革については、沢渡氏の最新刊『バリューサイクル・マネジメント ~新しい時代へアップデートし続ける仕組みの作り方』の中でくわしく触れています。「週5日×8時間」にとらわれず成果が出せる働き方にご興味のある方は、ぜひご一読ください。

コロナ時代を生き抜くための『働き方』の新常識~企業側・働く側の視点から~

倉重・近衞・森田法律事務所の代表弁護士 倉重公太朗氏

続いて、倉重・近衞・森田法律事務所の代表弁護士で、労働法を専門とする倉重公太朗氏が登壇しました。

働き方やビジネスのあり方が変わりつつありる今、労働管理に関して企業はどのような認識を持つべきでしょうか?働き手に期待される役割や働き方に関する価値観の移り変わりとともに解説いただきました。

倉重 公太朗 

弁護士(倉重・近衞・森田法律事務所代表)
應義塾大学経済学部卒業後司法試験合格、オリック東京法律事務所、安西法律事務所を経て2018年10月~倉重・近衞・森田法律事務所 第一東京弁護士会労働法制委員会外国法部会副部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)理事 経営者側労働法弁護士。労働審判等労働紛争案件対応、団体交渉(組合・労働委員会対応)、労災対応(行政・被災者対応)を得意分野とし、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。

テレワーク下のこんな労働時間管理は嫌だ!テレワークにおけるマネジメントと人事評価の正解は?

今では古い仕事の考え方

倉重氏:新しい働き方をどのように制度設計すれば良いか、と多くの企業が悩んでいると思います。しかし制度設計の以前に「テレワークは信用できない」、「従業員がサボるのではないか」といった次元の議論からは脱却する必要があります。従業員の働きぶりを監視したいニーズもかなりの企業から寄せられていますが、これも問題ありと言わざるを得ません。

たしかに、使用者は従業員の労働時間を把握し、適切に管理する義務があります。ただそうするためには、Webカメラを常時オンにし、監視しなければならないのでしょうか?PCの起動状態を逐一確認すれば、ちゃんと働いていたかどうかが分かるのでしょうか?

結論をいえば、成果を見れば良いのです。出勤と退勤の時刻を確認し、正しいかどうかをアウトプットで測るということです。

テレワークの人事評価で気を付けるべきこと

倉重氏: 今日1日で、どこまでタスクが進んだのか。どれくらいのクオリティのものが仕上がったか。それらをチェックすれば、労働時間の適正さが測れるはずです。人事評価についても同様のやり方で十分機能します。

ただ、実働時間と本人が申告する勤務時間に、大幅なギャップが発生してはいけません。その差分が生まれたら、すぐさま検知する仕組みが必要です。たとえば、PCの起動時間と打刻した時間が大幅にずれていたら、本人に問い合わせの通知が入るシステムが活用できます。

「働いたら負け」は、本当か?

倉重氏 対談の様子

倉重氏:働き方改革で有休の取得義務や残業規制が進む中、働くこと自体を悪とする風潮も醸成されているように思えてなりません。ですが本来、仕事は誰かの役に立つこと。人の役に立ち喜んでもらえることは、人生において楽しいことだと後進に伝えていきたいものです。

また、働く側も、自分の意思で進路を選択するのが重要な時代です。自分のやりたいことや好きなことにしたがって行動し、「今、この会社で働く意味」をつねに意識し、すりあわせていくことが必要です。逆に言えば、企業も存在意義を再定義し、従業員に発信すべきでしょう。

そうして、自分の好きな分野でプロとなり活躍する人が日本にもっと増えて欲しいと思います。そのために労働関連法令がどのようにあるべきか、という議論をみなさんと重ねられたら嬉しいです。

「意味ある企業になる」中小企業にとってのDXの本質とは?

株式会社We will代表取締役の杉浦直樹氏

DX(デジタルトランスフォーメーション)。企業がIT技術やデータを活用し、ビジネスモデルを抜本から変えることを指す言葉です。最近よく耳にしますが、中小企業はどのような理由からDXに取り組むべきなのでしょうか?

中小企業のバックオフィス支援を手がける株式会社We willより代表取締役の杉浦直樹氏が登壇。中小企業がDXを進める意味について講演しました。

杉浦直樹

株式会社We will代表取締役。大学卒業後日本オラクルにて会計ERPパッケージの13社同時展開プロジェクト等、多くのプロジェクトに携わる。同社退社後、米国ベンチャー企業を経て浜松市内税理士事務所へ入所。その後、税理士法人We will、 株式会社We willを設立。オープンイノベーション施設であるThe Garage for startups を主宰。経済産業省主催 始動Nextinnovator 第4期選出。浜松テレワークパーク実現委員会委員長。 

狭くなる中小企業のビジネス領域、DXを果たし経営変容を

中小企業の減少傾向について、初めて「新陳代謝」の冠が付いた2020年の中小企業白書

杉浦氏:テクノロジーの発達とともに近年、大企業が中小企業領域を担うようになっています。デジタル化を通じて、小分けの業務や低価格帯の顧客を集積できるようになったためです。全体のボリュームを出すことで、大企業が手がけられる事業領域が増えました。

また、ユーザーニーズを的確に捉えた特徴的な商品を開発し、大きな売り上げを上げる個人事業者も現れました。ECやネットショップ、決済手段の多様化により、商品の販売チャネルを確立しやすくなったためです。また、SNSやブログのおかげでユーザーへのアプローチも簡単になりました。

ここでお伝えしたいのは、中小企業の価値提供できる領域がどんどん狭くなっているということです。ですから、僕たちはこれまで以上に“意味のある中小企業”になることを求められているのだと感じています。

“意味のある中小企業”とは、どのような企業でしょうか?僕は、何かで1番である企業だと思っています。「1番かっこいい」でも「1番にお客様と近い」でも良い。何か1つでもエッジの効いた価値を提供できる中小企業が、今後生き残っていけるのではないでしょうか。

提供価値のエッジを立てたいと思ったときに必要なのが、DXによる経営変容です。より価値の高い仕事をするために、デジタルの力で組織やビジネスモデルをがらりと変える必要があるからです。

経営変容を起こすDXの前に、「マインド」および「事務(バックオフィス)」のDXが必要とのこと。

杉浦氏:一方で、労働生産性を高めるためのDXも必要です。自動化できる作業はデジタルで代替する。この“守りのDX”を実施したうえで、経営変容という“攻めのDX”に移行していくステップが重要です。

中小企業は地域の多様性そのものです。地元の中小企業が元気よく、新しいことに取り組んでいる地域は“美しい”と思っています。中小企業が自社の価値創造に注力できるよう、We willグループでは、DXによる中小企業のバックオフィス支援を行ってまいります。

ディスカッション:時間労働の固定観念を抜け出し、個人も各自のトランスフォーメーションを

3者によるディスカッションの様子

3者による個別セッションの後は、フリーディスカッションが行われました。海外と比較した日本の働き方や個人のスキルアップなどについて、議論を交わしました。

杉浦氏:「自分の力で自律的に生きてほしい」。国も企業もそんな期待を持ちはじめていますよね。そんな中で個人は、スキルをつねにアップデートしないと働き続けること自体が難しくなるように思います。

沢渡氏:「エンプロイアビリティ」の重要性が高まっています。直訳すると「雇われうる能力」のこと。プロとしての能力を高め、自分は何ができる人材であるかを説明可能にする。この人材力によって人生を切り拓けるかが問われています。

杉浦氏:国によっても異なると思いますが、雇用や働き方について海外ではどのような傾向にありますか?

沢渡氏:欧米では自己投資する人も多いですね。自らスキルアップしなければ、会社に契約してもらえないためです。デンマークをはじめ労働組合が強い国もありますが、それでも能力に応じて出世のスピードや報酬に差が出ます。自ら学び直しをしたり、社会人大学院に通ったりしている人が多い印象です。

倉重氏:積極的に自己投資をしてキャリアを駆け上がっていくタイプと、仕事はそこそこに家庭を大事にするタイプに二分されるでしょうか。価値観の違いとして、どちらの働き方も尊重されています。

沢渡氏:一方で、かなり若いうちから出世コースが分かれる国もあります。フランスが顕著で、13歳ころにはキャリアパスが決まります。有力企業の幹部を目指すなら、どんな教育を受け、どの大学を出なければいけないか決まっているためです。

倉重氏:私なんか、13歳のときは偏差値が37でしたからね(笑)。フランスやドイツに生まれ育っていたら、弁護士には絶対になれなかったと思います。

沢渡氏:(倉重さんとはお付き合いが長いですが、偏差値のことは)はじめて聞きました、驚きです(笑)。

倉重氏:新卒一括採用によって、若い人の失業率が非常に低いのが日本の長所だと思っています。能力や職歴が採用基準となる国では、「新卒」の肩書では雇ってもらえませんから。若い時代にさまざまな仕事を経験し、35歳ころまでに各自がキャリアの方向性を決められると良いと思います。

沢渡氏:企業側も管理職や社員の育成に投資することが重要です。教育を受けるのは入社時と管理職登用時のみ。10年、20年前に受けた管理職研修が最後で、時がとまっている管理職もいます。悪気なく古いマネジメントのやり方や考え方に固執する。マインドも変わらない。そのような企業も多いのではないでしょうか。管理職や社員のアップデートに投資をしてください。新しいやり方を知る、外の知識に触れる。その機会を創出してください。

また海外では、仕事と学びを両立できるように、ワークシェアリングしやすい仕組みやITツールが普及しています。育成とIT環境のアップデートに投資をする。この2つは、組織をイノベーティブに変革するために必須の前提条件と言えるでしょう。

倉重氏:働き方改革のために「有休を取りましょう」、「残業を減らしましょう」と言うのなら、「自ら学びましょう」というメッセージも発しなければ、結果的に本人のためになりません。何歳になっても勉強してチャレンジを重ね、かつ、後進にも教えてくれる人がいれば、若い人たちのモチベーションになります。

杉浦氏:倉重さんの著書『雇用改革のファンファーレ 「働き方改革」、その先へ』を読むと、諸外国の状況がよくわかりますね。日本の雇用制度にも、長所がたくさんあることが読んで知れるので、ぜひ手に取っていただきたいと思います。

時間労働からの脱却!真の成果・価値を生み出す働き方を目指して

倉重氏:とある企業が勤務日数を週5日から週4日に減らすにあたって、給料も八掛けにするという記事を読みました。もしそれが本当だったらもったいないな、と思います。成果・報酬を測る基準は、いまや労働時間だけではありませんから。

杉浦氏:労働時間からの脱却は、日本の働き方改革における大きなテーマかもしれませんね。

沢渡氏:時間管理で働くのが勝ちパターンの人は、その選択をするのが良いと思います。ただ、固定的な環境・就業時間では、成果の好スパイラルを生み出しづらい人・部署もあります。なにより、今までにない新たな価値を創出するようなクリエイティブな仕事とは相性が悪い。

クリエイティブ/ナレッジワーカーの働き方の勝ちパターンは「ひらめき」と「コラボレーション」にある。

どちらの人材にも気持ちよく働いてもらうには、人事・就労制度を分ける必要がありますよね。場合によっては、会社を分ける方法もありますし。

倉重氏: そうですね。自分はどう働いていくか、あるいは、どういう雇用社会であるべきか。こうしたテーマを今日のようなオープンな場で、ともに考える機会が重要です。

“半径5メートル”から変化を起こしましょう。何か1つでもいいので、みなさん自身でできるチャレンジを。一緒にがんばりましょう。

沢渡氏:移住やワーケーションのブームによって、人の流動性が高まっています。今こそみなさんに、新しい働き方と新しいビジネスモデルをぜひ作っていってほしいと思います。

杉浦氏:ハマリモ!では引き続き、今回のようなディスカッションの機会を設けていきたいと考えています。みなさんとディスカッションを重ねていけたらと思いますので、今後ともよろしくお願いします。

まとめ:DXを果たし、良い人材や顧客から選ばれる中小企業への変容を

対談の様子は配信もされました。

テレワークをはじめとする新たな働き方を模索・経験する人が増える中、地方への移住を希望する人も増加傾向にあります。そのような人材を受け入れるため、また、ステークホルダーから選ばれ続けるため、DXにより経営を変容する必要性が高まっています。そのためにも、まずはテレワークや一部業務のデジタル化を通じて、オープン型の組織作りを進めましょう。

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